一級建築士事務所 匠拓
伝統構法

伝統構法コラム

1.耐震補強
2.日本家屋再生

3.板倉構法
4.適材適所





[その1]伝統構法の耐震補強
伝統構法は在来工法と特性が異なるので
耐震補強は特別な配慮が必要です。

ここでは伝統構法独特の耐震補強について書いてみます。


基本:耐震補強の前に痛んだ箇所の補修を優先してください。



どれだけ補強をしても元々痛んだ箇所があっては持ちません。
補強の前に建物全体の調査を行い、修復計画を立て補強します。

補強は全体的に行う

伝統構法の構造は木組み・通し貫で繋がった物です。
弱い所だけを補強すると全体のバランスが崩れます。

建物全体を見て補強のバランスを加減します。


伝統構法耐震補強の禁じ手

1.筋交いを用いてはいけない

伝統構法は曲げ系の構造体です。
筋交いの補強を用いると柱の曲げを抑えてしまい
余計な応力を発生させます。

結果柱が折れる破壊で倒壊に至ります。

倒壊に至らなくとも柱頭・柱脚を破壊し
解体しなければ補修できません。

2.金物補強は行わない

仕口など接合部への金物補強も被災時に柱・梁の破壊を招きます。

弱い接合部だった場合、木組みにより粘りを持たせる補強を行います。

仕口が痛んでいるときは部材の補修を行い組み直します。

どうしても金物補強を行う場合は耐力の小さいものを使います。

3.石場建てにアンカーボルトは使わない

石場建ての場合基礎補強などせず、
アンカーボルトも使いません。

石場建てが免震要素ですのでその効力を活用します。

柱が沢山痛んでいる場合、柱を補修し同じく石場建てとします。


伝統構法耐震補強の手法

1.壁を増やす

既存の壁を近い強度で新たに壁を増やして耐震性を補います。

天井から床まで壁を作る方法や、腰壁・垂壁を増やす方法があります。

2.柱を増やす

柱の曲げ抵抗はかなり効果があります。添え柱も効果的です。

3.差鴨居・足固めの活用

出来るだけ開放的な空間とする場合、差し鴨居・足固めを用います。

ただし、この補強は柱仕口に応力が掛かるので柱太さに注意が必要です。
柱に添え柱を行うか、差鴨居・足固めをあまり太くしない配慮をします。







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